エンジニアのキャリアパス (Web業界編)
はじめに
年をとってきたのと、エンジニアチームの管理職を長くやってきたこともあり、エンジニアのキャリアパスについて相談されることがよくあります。
SIer業界の場合は探すと幾つかの資料があるのですが、Web業界のエンジニアのキャリアパスについては、なかなか納得できるものがないため、毎回相談されるたびにホワイトボードに書いていた内容を今回まとめることにしました。
はじめに断っておくと、私はエンジニアとして社会に出てから今年で14年目になり、現在の会社が4社目になります。私が経験した会社は4社中3社がいわゆる「Web業界」と呼ばれるような会社です。どうしても自分自身の経験してきた会社や業界のバイアスを受けていると思います。
また、私は現在37歳ですので、40歳以降のキャリアパスについては正直わかりません。とはいえ40歳から突然ルールが変わるわけではないので、考え方は同じだと思っています。
この記事は、こういったキャリアを歩むべきだという教科書ではなくて、「こういった考え方を持った人もいるんだ」的な話のネタとして、キャリアについて迷うエンジニアに読んでいただき、参考になれば嬉しいです。
また、キャリパスについて相談されている先輩や偉い人たちは、キャリアパスの多様性について理解を示してあげて、その人のキャリアパスが具体的であればそこに至る道程を示したりアサインし、具体的でなければ少しでも具体的になるように具体的にディスカッションしてあげてください。
エンジニアがキャリアパスについて不安に思う理由
エンジニアがキャリアパス(将来)について不安に思うのは以下の理由があると思います。
・年功序列のような制度・慣行がはじめからない業界で将来が見通しにくい。
・産業・職業としての歴史が浅く、社歴も長くないため、世の中にも、身近なところにもロールモデルとなる人がいない。
・企業、技術(スキル)、働き方などで、変化が非常に早く・激しく、現状のスキルやキャリアが将来有効かわからない。
キャリアパスとスキルパス
- スキルパス
- スキルを習得していくための道順。個々のスキルの関連を主に示している。
- 「こっちに方面のスキルを伸ばしていくと、こういうスキルがあるよ。」案内図。
- キャリアパス
- 自分の働き方の選択肢や市場価値の伸ばし方。
- スキルパスよりももう少し大局的で、習得した方が良いスキルの方向性を示してくれる。
ドラクエのようなRPGでいうと、どういった職業を選択して成長させていくかがキャリアパスで、
どの「特技(スキルとか魔法とか)」を習得して、よりハイレベルのスキルを習得するのかがスキルパスでしょうか。
キャリアの方向性
キャリアの方向性は大きく3分野に大別してみました。
- 技術
- 事業
- 開発することではなく、事業(サービス)を運営していくなかで、自身が成長していく分野。
- サービスのビジネスモデルや仕様を決める企画的な業務やプロジェクトマネジメントなどのスキルがあります。
- スキルを伸ばしていくと、事業責任者としてさらなる事業の成長や、新規事業の立ち上げを任されたりします。
- エンジニアリングは手段であって、やりたいことは事業(サービス作り)なんだ!という方に多いような気がします。
- エンジニアとしてのバックグラウンドを持つことで、開発チームとの密で良好な関係を築けたり、外注するときに開発委託先に騙されにくいといった利点もあるかと。
- 人事
- いわゆる「ラインマネジメント」。
- 採用、育成、評価、組織設計、制度設計など組織とその中の人たちの能力を活かし・伸ばすためのスキルがあります。
- 技術+人事 = 開発部長、事業+人事 = 事業部長というように、他の分野と組み合わせて経験していくことが多いと思います。
キャリアパスの例
- エンジニアスペシャリスト
- エンジニアとしての技術を深めていって、現場の第一線で活躍するハイスキルエンジニア。
- その能力を最大限活かすために「人事」分野の業務負荷を最小限にするために、部下を持たないか、少人数のチームリーダーとなる。
- 開発チームのマネージャー
- エンジニアとして現場の第一線で開発していたが、チームが大きくなるにつれて、徐々に管理職となっていくパターン。
- チームの規模が小さいときはプレイングマネージャーとして、エース&監督として活動するが、チーム規模が大きくなると人事面の仕事が増えて現場から離れがちになるかと思います。
- エンジニア出身の企画担当、ディレクター
- エンジニアとしてキャリアをスタートしたが、コードを書くよりも企画したり、ディレクションしたりすることが増えるパターン。
- コードを書くよりも、Excel, PowerPoint, Google等のAD系ツールを使う時間が増えて、コードを全く書かなくなる人が多いと思います。
- エンジニアリング経験があることを活かして、開発チームとの良好な関係を気付けたり、技術面を考慮した仕様書を書けるなど、開発経験を活かすことができます。
キャリアパスとスキルパスの連携
- キャリの実態は、経験によって得たスキルの集合なので、キャリアパスとスキルパスは一体です。
- でも、鶏と卵で、キャリアによって得たスキルもあれば、スキルによって得るキャリアもあります。
- また、技術と事業(企画)の両分野のスキルが必要となるフロントエンドエンジニアや、技術+人事の開発部長、事業+人事の事業部長のように複数分野にまたがったスキルもあると思います。
なお、図中のスキルは、単に例として上げただけなので、この順番でこのスキルを得ていくということを説明しているわけではありません。
スキル(経験)のレベル
一言に「◯◯ができる」といっても、以下のレベル(深さ)があると思います。なので、各スキルについて、自分がどのレベルなのか認識し、より深いレベルに到達するように勉強なり、場数なりを積むことが重要だと思います。
また、ハイスキルほど、教えてくれるひとがいなくなるし、本などで一般知識を得ても自分の状況でその通りに行かないことが増え、自分で試行錯誤しながら苦労することも増えると思います。
- 教えられてできる。
- 一人でできる。
- 教えられる。
- 新しい価値(仕組み、事業、組織、制度など)を作れる。
- (場合によっては)より広い範囲で貢献する(例: 世界 > 業界 > 会社 > 部門 > 個人)。
最後に
- 人によってやりたいこと、適してていることも違うでしょうから、おすすめのキャリアパスはないと思います。
- 自分が好きと思う方法に進めば良いと思うし、違うと思ってからキャリアチェンジは可能です。
- 各分野それぞれにやりがいも、楽しさも、価値ある仕事もありますし、どの分野でも給与を伸ばすことができると思います。
- ただし、どの分野に行っても、その分野を極めるぐらいのつもりで、一つ一つのプロジェクトやスキル習得をやり切ることが大事だと思います。
- また、自分自身のキャリアパス/スキルパスの目標が明確な場合、自分の現状(仕事・部署・会社)の延長に目標があるのか、もしくは、転職や移動など何らかの進路変更をしないと目標に到達しないのか?は1年に一回は考えてみても良いと思います。